夫婦ごと

自分勝手、わがまま妻の「とも」と、押しが弱くお人よしの夫「とり」、二人の愛息子「ひよこ」の愛の風景…たぶん。

妻の愛するもの

結婚してから毎日、妻は夫にお弁当を作っている。
それは妻が体調不良だったり、不在だったとき以外かかされたことはない。
夫は、結婚前から妻に社内食堂のまずさを語っていたので、毎日用意されるお弁当を妻の愛だと信じていた。
ある日、妻の友人が自宅に遊びに来た。
夫は息子のめんどうを見ながらその会話を聞いていた。

友人A「結婚って大変そうだねー。」
妻「なかなか楽しいよ。」
友人A「毎日料理とかするんでしょ。私無理だなー。」
妻「できるよ。私だってしてるんだから。」
友人A「お弁当作ってるんでしょ?」
妻「うん。」
友人A「すごいよー。愛妻弁当じゃん。大変でしょう。」

夫は友人の言葉に心で頷いた。
息子の世話をしながらのお弁当作りは毎日大変だろうに、妻は本当にがんばってくれている。
自分のために。

妻「大変だけどさ‥それよりも」

「私はお金が好きなんだ。」

夫「‥‥Σ」

「お弁当作らなかったら食費かかるじゃん。私は自分の苦労とか手間より何よりお金の方が大切だから。お弁当作るからこそ、旦那へのおこづかいも最小限に抑えられるわけよ。」

夫「‥‥‥‥」

友人A「ねー。うん。ともらしいね。」

妻「お金のためなら労は厭わないわ。

友人A「すごいねー。やっぱり私結婚とか無理かも。」
妻「できるよ。」

友人A「でも私、ともぐらいにお金愛せてないと思うし。」

妻「うーん。私くらい愛する必要はないと思うけど、大事だよね。愛は」
友人A「愛ねー。」

少し抜け殻になりながら、そこで語る愛は何か間違っていると思う夫だった。

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バレンタインと夫婦

夫は学生時代、基本的に恋愛に興味はなく、飄々と生きていたかのように見える。
実際何度か女性とつきあったこともあるのだが、恋愛にあまり重きをおいていないので、長続きもしなかったと語る。
そんな夫でもやはりバレンタインは例外だったらしい。

妻「もうすぐバレンタインだねー」
夫「あー、本当だ。もうそんな時期なんだねー。」

夫「でも悲しいよね。もうトキメキとかドキドキがないよね。」
「は?何言ってるの?私から必ずしももらえるとでも思ってるわけ?」
夫「Σ!」

夫「…いや、そういうわけじゃなくてさ。ほら、今年は誰かにもらえるだろうか、とか、そういうの。結婚したら関係ないじゃん。」
妻「へー。あなたでもそんなドキドキしたんだ?」
夫「(遠い目)したねー。そわそわしてたね。」
妻「へー。そわそわ。」
夫「こう、女子が自分に近づいてこようものなら…ね。」
妻「へー。意識したんだ。」
夫「あたかも意識しないように振舞って逆に不自然になったりね。」
妻「あー、いいね。なんか可愛いね。」

夫「どきどきしてね、動きが早くなるね。」
妻「手とか足とかね。」
夫「刻んじゃうよね、ビートを」
妻「刻んだんだ」

「16ビートだったね。」

「ソウルフルだね。」

「魂の叫びだよね。」

「俺の鼓動を聞け!だよね。」

「みんなー!元気かー!!だよね。」

「今日はみんなのために、新曲を持ってきたよ!!だよね。」

「聞いてください、俺とマッチ棒」

「Σマッチ棒?!」

夫「燃えたぎる想いをマッチ棒に表して…ね。」
妻「深いね。」

夫「…」
妻「…」

夫「なんの話だっけ。」
妻「バレンタインだよ。」
夫「マッチ棒関係ないじゃん。」
妻「知らないよ。」

とにかく、昨今、新作のチョコレートをお披露目する場所のようになっていたバレンタインだが、世の男性陣にとっても、結構重要な行事なのだと認識を改めさせられた妻だった。

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妻の価値観

夫に言わせると、妻は最強にネガティブ思考の持ち主だ。
あっけらかんとものすごく後ろ向きな事を言う妻に、夫はしばしば恐ろしくなる。

たとえば
息子が生まれたあと、万一のことを考え、夫婦は生命保険に加入した。
契約が終わり、妻が一言呟いた。

「これでいつでも死ねる」

夫「…いやいやいや」

そういえば妊娠中、妻はよく言っていた。

「保険に入ってないから死ねない」

保険の営業マンと談笑している妻を見ながら、契約解除してやろうかと思う夫だった。


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夫婦の遊び

夫婦はしばしば二人で子供のように遊ぶ。
それはトランプだったり、オセロだったり、罪のない他愛もない遊戯である。
しかし夫も妻も性格が基本的にひねくれているので、それが一筋縄で遂行することは少ない。
その日、夫婦は平和にしりとりをして遊んでいた。

妻「しりとりはじめー」
夫「めだかー」
妻「からすー」
夫「すいかー」

「川平ー」

「Σ慈英?」

妻「ジョン(兄)かもしれない。」

夫「……」
夫「かびら…ら、ら」

「ラマダンー」

「ラマダン?」

夫「知らないの?イスラム教の断食のことだよ

妻「普通知らないよ」
夫「うーそーだーよー。ともモグリじゃない?」
妻「何の。つか、ンでしりとり終わったし。」
夫「ンジャメナー」
妻「わかったわかった…もうやめよう。ラマダン以上の威力のある答えはできないよ…」

翌日。
しりとりに負けたのは夫のはずなのに、試合に勝って勝負に負けたと感じた妻は、次回は夫以上にインパクトのある答えをしてやろうと、国語辞典に手を伸ばしていた。

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妻の主張

korobu.jpg

妻は決して認めようとしないが、夫は妻のことをかなりのドジだと思っている。
細かいことは今省くが、妻があまりにドジなので、妻が出かけるとき、夫は常に妻が事故に遭ったり、転んだりしていないか心配している。

そう、妻はよく転ぶのだ。
その足下に何もなくても、その足下が平らな道だったとしても…。

(何もない道で妻つまずく)
夫「ほら!!もー!また転んだ!」
妻「転んでないよ!つまずいたんだよ!!」
夫「一緒だよ」

「一緒じゃないよ!転ぶ界ではねー、つまずくと転ぶには大きな隔たりがあるんだよ!」

「転ぶ界って」

妻「私はねー、ここ最近つまずくことはたくさんあっても、実際に転んだことはほとんどないんだからね。そこんとこはき違えないで欲しいわ。」
夫「一緒だよ…」

数日後

夫「ただいまー」
妻「おかえりなさいー。ねえ、今日転んだ。」
夫「また?どこで。」
「また、じゃないよ久しぶりだよ」
夫「いいよどうでも。どこで。」

「…畳」

「家?」

妻「違うんだよ、お布団を干したの。ひよこの。で、取り込んで、シーツかけて。右側のシーツの端を整えて、左側のシーツも整えようと思って、ね。布団を飛び越えようってジャンプ、したら、靴下が、畳で滑って…」

夫「あぶないなー、ひよこは」
妻「そばにいた。私が転ぶのを見て笑ってた。」
夫「ひよこにぶつかったらどうするの。本当に…ともは怖いよ。」
妻「でもね、違うの。聞いて。今回はちゃんと理由があって転んだんだから、正しい転倒なんだよ。」
夫「正しい転倒?」
妻「正当な転倒だよ。だから大丈夫なの。」
夫「転ぶのに正しいとか間違いとかないから。」
「何言ってるの?」

「理由なき転倒と、理由あり転倒を一緒にしないで!!」

「逆ギレ?!」

夫「理由なき転倒とか言ってさー、格好良いみたいな名前つけてもさー…結局転ぶことに変わりないじゃん…」

「全然違う。今回は理由があったの、転ぶ界ではかなり上のランクの転び方だよ。だから私は悪くないの。」

夫「…また転ぶ界」

自分は悪くない、転ぶ界において今回は不当な転び方はしていないと主張を続ける妻を見ながら、そんな世界は理解したくもないと思う夫であった。

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